東京都議会の2025年第3回定例会が9月24日に開会し、小池百合子都知事は火葬体制の強化を含む所信表明を行いました。高齢化の進展や人口集中に伴い、東京都内では近年火葬料金が高騰しており、適切な葬儀・火葬体制の整備が求められています。小池氏は「実態を精緻に把握し、火葬能力の強化に向けた取り組みを検討する」と強調しました。
火葬料金高騰の背景
東京都内では、物価上昇や人件費の高騰が火葬料金の増加に影響しています。都市部では火葬場の数が限られており、特に高齢化が進む地域では需要が急増。結果として、予約が取りにくくなるだけでなく、葬儀費用の総額が膨らむ傾向にあります。都はこれらのデータを詳細に把握し、火葬施設の増設や運営効率化、予約システムの改善などを進める必要があります。
土葬のデメリットと日本での現状
火葬体制の議論に関連して、日本では一般的に火葬が主流であり、土葬はほとんど行われていません。その理由として以下のデメリットが挙げられます。
- 衛生面の問題
土葬では遺体が直接土に埋められるため、雨水や地下水による汚染リスクがあります。都市部では地下水の利用も多く、環境衛生上の問題が懸念されます。 - 土地利用の制約
土葬には広い土地が必要で、都市部では土地確保が難しいことが大きな課題です。東京都のような人口密集地では現実的ではありません。 - 管理コストの増加
墓地や埋葬場所の管理には多大なコストがかかります。火葬に比べて土地の維持や衛生管理が難しく、自治体負担も大きくなります。 - 感染症リスク
適切に管理されない場合、土葬は細菌やウイルスの拡散リスクを伴う可能性があります。特に都市部では公衆衛生上の懸念が強く、火葬の方が安全です。
こうした理由から、東京都は土葬ではなく効率的かつ安全な火葬体制の拡充を優先しています。
その他の所信表明ポイント
小池氏は火葬体制の強化のほか、都営住宅入居者の配偶者認定に関する条例改正案など計46件を審議対象として提出。パートナーシップ宣誓を行ったカップルを配偶者と同等に扱う内容で、多様性の尊重も意識した改正案です。
さらに、税収の集中問題にも触れ、預貯金の利子に課す住民税の見直しについて国の議論に異議を唱えました。小池氏は「東京の力をとにかく地方に切り分ければよいという短絡的な発想だ」と批判しています。
議会の会期は10月9日までの16日間。代表質問は9月30日、一般質問は10月2日に予定されています。
まとめのポイント
- 東京都内で火葬料金が高騰する中、小池都知事は火葬体制の強化を表明
- 高齢化や人口集中が料金高騰の背景であり、効率的な火葬施設整備が課題
- 土葬は衛生面・土地利用・管理コストの面で都市部では現実的でない
- 都営住宅条例改正や税制への意見など、多方面の政策も所信表明に盛り込まれた
- 今後、火葬施設の増設や運営改善が東京都の重要課題となる
