今回のジジポリでは、町内会(自治会)を退会した住民がごみステーションを使えるかどうかをめぐって争われた訴訟と、その和解内容について解説していきます。
① 導入:町内会と行政サービスの「境界線」を問う裁判
地域コミュニティの基盤ともいえる町内会(自治会)。しかしその活動や費用負担をめぐり、近年トラブルが増えています。
2025年10月28日、福井県福井市で起きた**「町内会退会者のごみステーション使用訴訟」**が、名古屋高裁金沢支部で和解に至りました。
この問題は、「町内会を退会した住民が、ごみを捨てる場所を使えないのは違法ではないか」という全国的にも関心の高いテーマでした。
地域住民にとって身近な問題だけに、今後の自治会運営のあり方にも影響を与えそうです。
② 概要:退会後も利用を求めた男性が和解で勝ち取った権利
訴えを起こしたのは、福井市の40代男性。
男性は2023年3月、町内会の運営方針に不満を持ち退会したところ、町内のごみステーションの使用を禁じられました。
これに対して男性は、
「福井市民として、行政サービスであるごみ収集を受ける権利がある」
と主張し、町内会を相手に提訴しました。
一審(福井地裁)の判断
2024年4月の福井地裁判決では、
- 町内会区域の住民は、会員でなくても公共的な利益を受けている
- ごみステーション管理費用や町内会維持費を考慮し、年1万5千円の使用料が妥当
と判断されました。
男性はこれを不服として控訴していましたが、10月28日、一審と同額の使用料で和解が成立しました。
和解の内容では、ごみステーションの使用に加え、**防災備品(放水ホースなど)**も利用できるようになりました。
③ 専門用語解説:町内会とは何か?その法的位置づけ
- **町内会(自治会)**とは
地域住民が自主的に組織し、清掃活動や防災、防犯など地域の共同管理を行う団体のこと。
ただし、法的な加入義務はありません。あくまで任意団体です。 - ごみステーション
地域ごとに設置されるごみの集積所。多くは町内会が設置・維持管理を行っており、行政のごみ収集はここから行われます。
このため、「町内会を退会するとごみステーションを使えなくなる」という問題が、全国各地で起きています。
④ 影響と今後の対応:和解は“妥協点”か“新たな前例”か
今回の和解では、退会者も一定の使用料を払えば町内の設備を使えるという形になりました。
これは、**町内会と非会員の“共存モデル”**として注目されています。
一方で、町内会側には次のような懸念もあります。
- 「非会員にも利用を認めれば、加入率がさらに下がるのではないか」
- 「公平な費用負担の線引きが難しい」
行政側としても、ごみステーションが町内会の管理下にある場合、法的に介入しづらいグレーゾーンが残ります。
あなたの地域ではどうでしょうか?
町内会と行政の役割、しっかり分かれていますか?
⑤ 読者への問いかけ
「町内会に入らなくても行政サービスを受けられるべき」
という考え方と、
「地域を維持するためにみんなで費用を分担すべき」
という考え方。
どちらにも一理あります。
あなたなら、どんな“折り合い”が適切だと思いますか?
まとめポイント
- 福井市の町内会退会者がごみステーション使用を求めた訴訟で和解が成立。
- 使用料は一審判決と同額の年1万5千円に設定。
- 防災備品の使用も認められ、非会員との共存モデルが形成。
- 全国的に増える「町内会トラブル」への1つの解決例となる。
- 自治のあり方と公平な負担の線引きが今後の課題。
(出典:福井新聞「町内会退会者のごみステーション使用訴訟、和解が成立 使用料は一審判決と同額」


