ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、9月27日に開催された国連総会一般討論で演説を行い、欧州との関係やウクライナ停戦交渉に関するロシアの立場を改めて示しました。
欧州へのけん制―「侵略には断固対応」
演説の中でラブロフ外相は、ロシア軍機による欧州各国の領空侵犯が繰り返されていることについて「欧州を攻撃する意図はない」と説明しました。しかし同時に「我が国へのいかなる侵略行為にも断固として対応する」と強調。欧州側が挑発と受け止めて警戒を強める中、ロシアはあくまで防衛姿勢を強調する形をとっています。
さらに演説後の記者会見では、ロシアの無人機や軍機が欧州によって撃墜された場合について「深く後悔することになる」と述べ、反撃の可能性を示唆しました。これは、NATO加盟国がロシアの軍事行動に対して対抗措置を取る場合、重大な衝突に発展するリスクを警告するものといえます。
停戦交渉への「一定の期待」
ウクライナ戦争を巡っては、8月に米国アラスカ州で行われた米ロ首脳会談をきっかけに両国間の対話が継続しているとし、「一定の期待を抱いている」と発言しました。ラブロフ氏は、和平への可能性を完全には否定せず、外交的余地を残している姿勢をにじませました。
ただしロシア側は条件として、
- NATOのさらなる東方拡大の阻止
- ウクライナ国内におけるロシア語話者の権利保障
を改めて主張。これらを和平の前提条件と位置づけています。
NATOへの批判も強調
演説ではNATOに対する批判も展開されました。ラブロフ外相は、NATOが欧州域内だけでなく「南シナ海や台湾海峡にまで影響を及ぼしている」と言及し、地域の不安定化を招く存在だと非難しました。これは欧州情勢と同時にアジア太平洋地域にも関心を広げる発言であり、NATOのグローバル展開に対する強い警戒感を表したものと考えられます。
まとめのポイント
- ラブロフ外相は国連総会で「侵略には断固対応」と強調し、欧州への警告を発した。
- ロシアは欧州への攻撃意図を否定しつつ、領空侵犯問題では撃墜に対抗措置を示唆。
- ウクライナ停戦交渉には「一定の期待」を示し、米ロ間の対話継続に含みを持たせた。
- NATOの東方拡大阻止とロシア語話者の権利保障を和平条件として改めて主張。
- NATOがアジア太平洋地域にも影響を広げていると批判し、国際秩序への懸念を表明。
ロシアが防衛と外交の両面でメッセージを発信した今回の演説は、欧州だけでなく国際社会全体の安全保障環境に直結するものであり、今後の米ロ・欧露関係を占う重要な発言といえるでしょう。