2025年の自民党総裁選では、外交・安全保障や経済政策と並び、外国人政策をめぐる論戦が大きな注目を集めています。背景には、不動産価格の高騰、人手不足の深刻化、そして外国人労働者や留学生をどう受け入れ、共生していくかという課題があります。候補者たちはそれぞれの立場から具体的な政策を提示し、国民的な議論を呼んでいます。
外国人による不動産取得規制
まず争点となっているのが、外国人による土地・建物の取得規制です。
- 小林鷹之・元経済安全保障相
「安全保障上重要な土地や住宅用不動産の取得を規制すべき」と主張。国家安全保障の観点からも規制強化が必要としています。 - 高市早苗・前経済安保相
過去に規制法案を目指した経験を踏まえ、「WTO加盟国との協定で外国人差別的な規制は難しい」としながらも、新たな交渉を通じて土地取得にルールを設けるべきと訴えています。 - 茂木敏充・前幹事長
土地の取得を一元的に管理し透明性を確保、不当な取引に厳しく対処すると強調。 - 林芳正官房長官
農地では国籍の届け出が義務化されていることを例に挙げ、一般の土地についても国籍記載を義務付け、実態を把握する案を示しました。
全国的に不動産価格の高騰が続く中、外国人投資家の影響は無視できず、経済と安全保障の両面からの規制議論が進んでいます。
「司令塔」組織の強化
次に注目されているのが、外国人政策を一元的に調整する「司令塔組織」のあり方です。
- 小泉進次郎農相
外国人による不適切な制度利用(医療保険・児童手当など)を是正し、徹底的な実態把握とルール見直しを進めると宣言。年内にアクションプランを策定するとしました。 - 高市氏
司令塔機能を強化し、首相主導で法整備まで可能な組織を構築するべきと提案。
政府もすでに外国人関連課題に取り組む新たな司令塔組織を立ち上げており、総裁選の論戦を通じてその権限強化や役割拡大が議題となっています。
外国人労働者の受け入れと抑制
少子高齢化と人手不足が進む中、外国人労働者の受け入れは避けられないテーマです。
- 2019年には「特定技能」在留資格が創設され、農業・介護・建設などで外国人労働者が活躍。
- 2027年4月からは「技能実習制度」に代わる「育成就労」が始まり、人数の上限を設ける方向。
- しかし、他の在留資格では人数制限がなく、政府内でも「総量規制」を検討する動きが出ています。
野党側の動きとしては、日本維新の会が人口比率に基づく外国人受け入れ抑制を提言。林官房長官も「増加速度を国が調整すべき」と前向きな姿勢を見せました。
一方で、小林氏は「デジタル化や労働環境改善で外国人依存を減らすべき」と発言。受け入れ抑制と同時に国内人材の活用を重視しています。
今後の焦点―排外主義ではなく共生社会へ
外国人労働者や留学生は、すでに日本社会を支える存在となっています。人手不足の解消や地域経済の維持に欠かせない一方で、社会保障や安全保障とのバランスをどう取るかは難しい課題です。
総裁選での論戦が「排外主義的なスローガン」に終わるのではなく、外国人と共生するためのルールづくりや制度整備に具体的につながることが求められています。
まとめのポイント
- 自民党総裁選では外国人政策が主要争点に浮上。
- 「不動産購入規制」では小林氏・高市氏らが規制強化を主張。
- 「司令塔」組織の強化で外国人関連課題を一元管理する案が相次ぐ。
- 労働力不足を背景に、受け入れ拡大と人数抑制のバランスが論点。
- 今後は「排外主義に陥らず、外国人と共生するためのルールづくり」が最大の課題。