埼玉県川口市議会は9月30日、外国人による交通事故の防止と被害者救済を国に求める意見書を賛成多数で可決しました。近年、市内では外国人による無免許運転や無保険状態での交通事故、さらには飲酒運転やひき逃げ事故が相次いでおり、被害者が十分な補償を受けられないケースも見られることから、自治体がこうした意見書を可決するのは異例の動きです。
同日に可決された意見書では、出入国在留管理庁の「不法滞在者ゼロプラン」の着実な実行も求める内容が含まれており、いずれも自民党の提案で議長を除く38人中32人が賛成しました。反対は立憲民主党系会派2人と共産党会派4人の計6人で、両会派は「外国人差別につながる可能性がある」として反対しています。
意見書の主な内容
意見書では、以下の点が主張されています。
- 無免許運転や無保険運転、飲酒運転の厳格な取り締まりの強化
- 交通安全指導や地域の実情に応じた支援策の提供
- 自賠責保険だけでは十分でない被害者補償の拡充
現行制度では、自賠責保険未加入車による事故やひき逃げ事故で被害者となった場合、自動車損害賠償保障法に基づき自賠責保険と同等の補償が受けられますが、補償額は十分とは言えず、被害者救済の強化が求められています。
最近の事例
自民党の松浦洋之氏は採決前の討論で、昨年9月に市内で発生した無免許引き逃げ事故を紹介しました。この事故では、トルコ国籍の当時18歳のクルド人少年が無免許運転により10代男性2人を死傷させ、逃走しました。少年はさいたま地裁で懲役5年の判決を受け控訴中です。松浦氏は、事故被害者が1年間に6度の手術を受けながら懸命に治療を続けていることを示し、「外国人による交通事故防止と被害者救済は必要不可欠」と訴えました。
さらに、今月24日にもトルコ国籍の無職女性(38)による無免許引き逃げ事故が発生しており、松浦氏は「自賠責保険は最低限の補償であり、多くの日本人は自らの安全のため任意保険に加入している」と指摘しました。
賛否両論の声
立憲民主党の今田真美氏は、特定の人々を不当に悪者に仕立て上げる内容であり、「偏見を広げる差別的な意見書だ」と反対意見を表明しました。一方、日本維新の会の池田けい氏は、外国人と日本人では交通ルールや運転文化が異なる場合があることに触れ、現行制度の不備を指摘。さらに「外国人差別を理由に本質的課題に蓋をしてしまうことは、市民間の分断を深める」と賛成理由を説明しました。
川口市議会は令和5年6月にも、トルコ国籍のクルド人の一部を念頭に置き、「一部外国人による犯罪の取り締まり強化」を求める意見書を可決しており、今回の可決はその延長線上にあります。
中立的視点での考察
今回の川口市議会の意見書可決は、外国人による無免許・無保険運転の被害者救済という実務的な課題と、特定の国籍や人々を対象とする表現による差別懸念の双方をはらんでいます。市議会の立場としては、事故防止や被害者保護を重視する一方、議会内で賛否が分かれるように、社会的影響や偏見の拡大への配慮も求められる状況です。
まとめのポイント
- 川口市議会は外国人による無免許・無保険事故防止と被害者救済を国に求める意見書を可決。自治体としては異例の動き。
- 意見書は、事故防止の強化や自賠責保険だけでは不足する補償の拡充を求める内容。
- 市議会内では賛否が分かれ、立民・共産は「外国人差別につながる」と反対。自民・維新は被害者救済や交通安全強化の観点で賛成。
- 今回の可決は、外国人による交通事故対策と社会的公平性、偏見防止のバランスを問う課題として注目される。