米国務省は2025年9月29日、世界各国の人身売買に関する年次報告書を公表しました。その中で、日本の外国人労働環境について依然として厳しい評価を下し、人身売買や搾取への対策が「不十分」と批判しています。報告書は各国を4段階に分類しており、日本は前年に続き、上から2番目のランクに据え置かれました。
日本の外国人労働環境をめぐる問題
米国務省は長年、日本の外国人技能実習制度において劣悪な労働環境や人権侵害が発生していると指摘してきました。具体的には、低賃金労働や長時間労働、雇用主によるパスポートの取り上げなど、事実上の強制労働に近い状況が繰り返し問題視されてきました。
今回の報告書でも、制度改革の動きは評価しつつも、依然として「人身売買防止のための取り組みは十分ではない」と明言しています。
新制度「育成就労」と今後の展望
日本政府は、従来の技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を2027年4月から導入する方針を示しています。報告書は、この改革が外国人労働者の権利保護につながる可能性がある点を認めつつも、制度の実効性が担保されるかどうかは依然として課題であると指摘しました。
制度設計の段階で透明性と実効性を高めることができなければ、過去と同じように労働搾取が温存される懸念が残ります。
国際比較と日本の立ち位置
報告書では、米国・英国・韓国など33カ国・地域が最高ランクに位置づけられました。一方で、中国、ロシア、北朝鮮といった国々は最低ランクとされています。
日本はこれらの国々に比べれば一定の努力を評価されていますが、国際社会から見れば「先進国として不十分な対応にとどまっている」という認識が根強いのが現状です。
まとめとポイント
- 米国務省は2025年版報告書で、日本の外国人労働環境に依然として課題が多いと指摘。
- 技能実習制度に代わる「育成就労制度」導入を評価する一方、実効性への懸念を表明。
- 日本は上から2番目のランクにとどまり、先進国として十分な対策が求められている。
- 国際的には、労働者の人権保護や透明性ある制度運用が急務。