今回のジジポリでは、**伊藤詩織さんのドキュメンタリー映画をめぐる「許諾問題」や「海外への説明責任」**について解説していきます。
① 導入:注目を集める「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」問題とは?
ジャーナリストの伊藤詩織さんが監督した映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』が、アメリカのアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたことで、再び国内外から注目を浴びています。
しかし、その一方で、使用映像の「許諾(きょだく=使用の正式な同意)」をめぐる問題が再燃しています。元代理人の西広陽子弁護士らは10月20日、東京の日本外国特派員協会で会見を開き、「伊藤さんが海外で説明責任を果たしていないのではないか」と疑問を呈しました。
この問題は単なる映画の話にとどまらず、報道の自由と個人の権利、そして国際的な信頼性にも関わる重要な論点です。
② 概要:弁護士側の指摘と映画の現状
『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は、伊藤さん自身が性被害を受けた体験をもとに、被害の実態や司法制度の課題を記録したドキュメンタリー作品です。
しかし弁護士側は、
- 「裁判以外で使わない」と誓約された防犯カメラ映像
- 警察官の音声データ
などが、関係者の承諾なしに使われていると指摘しています。
そのため、国内での劇場公開は見送られており、海外では配給が進む一方で、日本では未公開のままという異例の状況となっています。
③ 専門用語解説:なぜ「許諾問題」が重要なのか?
ここで押さえておきたいのが「著作権」や「肖像権(しょうぞうけん)」などの基本的な権利です。
- 著作権:作品を作った人が、その使い方を決める権利。無断で使うと違法となる。
- 肖像権:本人の許可なく顔や姿を公開されない権利。
- 許諾(きょだく):映像や音声を使う際に、関係者が「使ってもいいですよ」と正式に認めること。
映画やドキュメンタリー作品では、こうした許諾を取ることが倫理的にも法的にも必須です。
特に海外で配給される場合、日本国内よりも権利関係のチェックが厳しいため、問題が国際的に広がるリスクもあります。
④ 影響と今後の対応:国際評価と説明責任の両立
西広弁護士らは、伊藤さんが海外メディアに対し、許諾問題に触れず「政治的にセンシティブな問題」などと説明している点を問題視しています。
一方で、伊藤さんの作品は「性暴力問題への啓発」として高い評価を受けており、社会的意義があるとの声もあります。
では、どのようにして両立を図るべきでしょうか?
- 制作者は被写体や関係者の権利を尊重する姿勢を持つこと。
- 弁護士や専門家のチェック体制を強化し、透明性のある説明を行うこと。
- メディアや観客も、作品の背景にある倫理的側面を意識して受け止めること。
この問題は、「表現の自由」と「他者の権利保護」のバランスをどう取るかという、日本社会全体の課題を映し出しています。
⑤ 読者への問いかけ
あなたは、社会問題を伝えるためなら多少の無断使用が許されると思いますか?
それとも、どんなに意義があっても関係者の許諾が最優先だと考えますか?
⑥ まとめポイント
- 伊藤詩織さんの映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』が国際的に高評価を得る一方で、映像の許諾問題が再燃。
- 弁護士側は「海外配給会社への説明責任」を改めて指摘。
- 許諾や肖像権の理解が、表現の自由と権利保護の両立に不可欠。
- 今後の対応次第で、日本の報道・映像業界の信頼性にも影響を与える可能性。
- 私たち一人ひとりが、「伝える自由」と「守るべき権利」の境界を考える必要がある。
(出典:共同通信「海外への伊藤詩織さん説明に疑問 弁護士、許諾問題再び指摘」


