今回のジジポリでは、ジャーナリスト・伊藤詩織さんが映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』における無許可映像使用について謝罪した経緯と、映画制作における倫理・表現の問題について解説していきます。
① 導入：注目を集める「取材倫理」と「表現の自由」の境界線
社会的な関心が高い性暴力問題を題材にしたドキュメンタリー映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』。
その監督であり、同時に当事者でもある伊藤詩織さんが、取材時に撮影した映像を無許可で映画に使用したことを謝罪しました。
この出来事は、
「真実を伝えること」と「取材対象者の権利を守ること」——
この2つの価値のバランスをどう取るべきか、という大きなテーマを社会に投げかけています。
💬あなたは、報道の自由とプライバシーのどちらを優先すべきだと思いますか？
② 概要：無許可収録の経緯と謝罪内容
伊藤さんは10月26日、自身の公式サイトで「深くおわび申し上げます」と題した謝罪文を公表しました。
謝罪の対象となったのは、事件当夜に元TBS記者・山口敬之氏と伊藤さんをホテルまで運んだタクシー運転手およびその家族です。
問題の映像は、伊藤さんが運転手に取材を行い、事件当日の様子を語る場面。
伊藤さんによると、半年以上にわたり連絡を試みたものの応答が得られず、やむを得ず使用を決めたと説明しました。
しかしその判断は「誤りだった」として、以下のように述べています。
「ご本人やご家族の皆さまに多大なご不快な思いをおかけしました。深く反省しております。」
伊藤さんはまた、映画の修正版を制作し、当該人物と家族から上映の同意を得たことを明らかにしました。
③ 専門用語をやさしく解説
- ドキュメンタリー映画：
現実の出来事をもとに、取材や記録映像を使って社会問題などを描く映画のこと。 - 報道倫理（ほうどうりんり）：
取材や報道を行う際に、相手のプライバシーや人権をどこまで尊重すべきかという考え方。 - 表現の自由：
憲法で保障された「自分の考えを自由に表現する権利」。ただし他人の権利を侵害しない範囲で行使されます。
④ 影響と今後の対応
映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は、米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされるなど、国際的に高い評価を受けています。
しかし、日本国内ではまだ上映されておらず、今回の問題が上映実現のハードルになる可能性も指摘されています。
一方で、伊藤さんの謝罪と修正版の公開許可は、「誠実な対応」として一部から評価されています。
それでも、「報道の自由」「取材対象者の同意」「被害者の立場」という複雑な要素が絡み合う問題であり、単純に善悪を決められるものではありません。
💬報道が真実を伝えるために多少のリスクを取ることは、正しいことなのでしょうか？
それとも、取材される側の権利を最優先すべきでしょうか？
⑤ 読者への問いかけ
- ドキュメンタリー作品における「同意のない取材」はどこまで許されると思いますか？
- 「真実を伝える」という目的のために、倫理的な配慮をどの程度求めるべきでしょうか？
- 伊藤さんの謝罪対応を、あなたはどう評価しますか？
⑥ まとめポイント
- 伊藤詩織さんが無許可で証言映像を使用したことを謝罪。修正版の上映許可を得る。
- 問題の映像は事件当夜のタクシー運転手への取材部分。半年間の連絡試行も不成立だった。
- 報道倫理と表現の自由のバランスが改めて問われている。
- 映画は国際的に評価されており、今後の国内上映にも注目が集まる。
- ジャーナリズムにおける「同意」「信頼」「透明性」の重要性を示す事例となった。
（出典：沖縄タイムス「伊藤詩織さん、タクシー運転手と家族に謝罪 証言を無許可で映画に収録、修正版上映の同意得る 「ご不快な思いをおかけした」
