東京都の小池百合子知事は、2025年8月に東京都とエジプトの経済団体「エジプト・日本経済委員会」と結んだ雇用に関する協定について、9月19日の記者会見で「見直しは考えていない」と明言しました。この合意は、エジプト人労働者が日本国内で就労する際の支援を目的としており、情報提供や研修プログラムの開発支援などが盛り込まれています。
合意の背景と内容
東京都は、国内での労働力不足が深刻化する中、外国人労働者の活用と国際的な人的交流の促進を狙いとして、エジプトとの協力関係を強化しました。協定では具体的に以下の内容が含まれています。
- エジプト人労働者に向けた就労情報の提供
- 日本での職業研修や教育プログラムの開発支援
- 双方の経済団体や企業とのマッチング促進
- 日本国内の職場環境や文化に関する適応サポート
東京都としては、技能実習制度や特定技能制度など既存の在留資格制度を前提に、円滑な雇用環境を整備することが目的です。
批判と懸念の声
一方で、今回の合意を巡り、**「移民受け入れにつながる」**として懸念や批判が一部で広がりました。都庁前では、合意の撤回を求めるデモも実施されました。批判の主なポイントは以下の通りです。
- 国内労働者の雇用機会の圧迫
一部では、外国人労働者の増加が日本人の雇用機会に影響すると懸念する声がある。 - 社会保障や医療費への負担増
長期的な在留者増加に伴い、社会保障費や医療費の増加が懸念される。 - 情報の誤解やデマの拡散
合意内容が十分に伝わらず、「無条件の移民受け入れ」と誤解されるケースがある。
小池知事はこれに対し、「誤った情報が拡散されている」と指摘し、正確な情報発信の重要性を強調しました。
関連する外国人雇用・政策の動き
今回のエジプト協定は、近年の外国人労働者受け入れ拡大の一環として位置付けられます。国内では以下のような関連政策が進行中です。
- 特定技能制度:介護・建設・農業などで外国人労働者を受け入れる制度。受け入れ人数に上限を設け、技能向上を目的とする。
- 育成就労制度(2027年開始予定):技能実習制度の後継として、外国人労働者の育成と就労を組み合わせる新制度。
- 多国間経済協力:ASEAN諸国や中東諸国との人的交流・経済協力を促進し、労働力不足の緩和と国際関係強化を狙う。
東京都としては、エジプトとの協定は都市部の人手不足の解消だけでなく、国際交流や多文化共生の推進という側面も意識しており、単なる労働力確保ではないことを強調しています。
専門家の見解
人材育成や外国人雇用に詳しい専門家によれば、今回の協定はあくまで情報提供や研修支援が中心であり、無制限な移民受け入れではないと指摘します。技能や日本文化への適応を重視することで、労働力の質を高め、社会全体の共生環境を整える狙いがあるとのことです。
まとめのポイント
- 東京都とエジプトの経済団体は、エジプト人労働者の就労支援に関する協定を締結
- 合意内容は情報提供・研修支援などで、移民受け入れ拡大ではない
- 一部で批判やデモが発生したが、小池都知事は見直しは考えていないと明言
- 今後は正確な情報発信と、外国人労働者との共生環境整備が重要課題
- 特定技能制度や育成就労制度など、国内の外国人雇用政策と連動した取り組み