■ なぜこのニュースが重要なのか
近年、飲食業やサービス業で「長時間労働」や「サービス残業」といった言葉をよく耳にします。
しかし、今回の「丸亀製麺」の元店長が訴えたケースは、それらをさらに一歩踏み込んだ“見えない労働”の問題です。
「休憩と記録された時間も、実際は働いていた」——。
つまり、**働いているのに“休憩したことにされていた”**という実態が明らかになりました。
この裁決は、働く人にとって「自分の時間がどう記録されるのか」という根本的な課題を突きつけています。
■ 元店長が訴えた“休憩時間の改ざん”とは
この問題が起きたのは、讃岐うどんチェーンで知られる「丸亀製麺」。
元店長の20代男性は、実際には働いていた時間が「休憩時間」として処理されていたと訴えました。
- 店長昇格後、業務量と責任が増大
- 1日の労働時間が13時間を超える日も
- 残業時間が月45時間を超えないよう「休憩時間を多く記録するよう指示された」
- 実際の休憩時間が店長就任前の3倍以上に記録されるという“不自然なデータ”
男性は、心身の限界を超え、2019年にうつ病を発症。
一度は労災認定を受けましたが、当初は「休憩時間の改ざん」については認められませんでした。
■ 国の労働保険審査会が「働いていた」と認定
2024年8月、男性は再審査を求め、国の「労働保険審査会」に訴えました。
その結果、「実際は働いていた」と主張が認められる裁決が4月に下されました。
審査会は、
- 休憩時間が異常に長い記録が続いていた
- 実際の業務量と休憩時間のバランスが取れていない
と判断し、「休憩扱いされた時間も労働時間と認めるべき」と結論づけました。
これは単なる一人のケースではなく、全国の職場に警鐘を鳴らす重大な判断です。
■ 休憩時間の「付け替え」はなぜ起こるのか?
労働基準法では、「1日に6時間を超える労働には45分以上の休憩を与えること」が定められています。
また、月45時間を超える残業を防ぐために、会社側は「労働時間の帳尻合わせ」を行うケースも。
その結果、
- 実際は働いているのに「休憩」として記録
- タイムカード上は“ホワイト”だが、実態は“ブラック”
という構造が生まれています。
こうした操作は、過労死やメンタル不調の温床にもなりかねません。
■ 同じことは他業種でも起きている?
専門家によると、この「休憩扱いの付け替え」は飲食業だけでなく、介護・運送・小売業などでも起きているといいます。
現場責任者にとっては、
「人手不足の中でシフトを守るために、無理をするしかない」
という構造的な問題も背景にあります。
つまり、個人の問題ではなく、労働環境そのものの設計ミスが根底にあるのです。
■ あなたの職場は大丈夫?見直すべきチェックポイント
もしあなたが働く職場でも、次のような状況があれば注意が必要です。
- 実際に働いているのに「休憩中」と言われる
- タイムカードの記録と現実が一致していない
- 上司の指示で勤務記録を修正している
- 長時間労働が慢性化している
これらに心当たりがある場合、労働基準監督署や労働相談窓口に相談することが大切です。
■ まとめポイント
- 「丸亀製麺」元店長のケースで、休憩時間中の労働が認定された
- 休憩時間の「付け替え」は、過労やうつ病の原因になり得る
- 飲食業以外にも、同様の問題が多くの業種で起きている
- 自分の職場の労働時間や休憩記録を定期的に見直すことが重要
- 法律上の休憩義務と実際の現場の乖離をなくす社会的取り組みが求められる
あなたはどう思いますか?
「休憩中も働いていた」というケース、あなたの職場では起きていませんか?
「記録上は休憩している」ことにされる社会は、果たして正常なのでしょうか。
(出典:毎日新聞デジタル「働いたのに休憩扱い」幅広い業種で横行?丸亀製麺元店長はうつ病に」
